THC規制に関する厚労省への再質問書

間延びしましたが、昨年12月に施行されたCBD関連製品におけるTHC残留限度値について、某弁護士の監修を経て厚労省に再質問書を送付しました。内容は下記の通りです。
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厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課 殿

2025年 3月16 日
株式会あさやけ
長野県諏訪市城南1-2562-1
代表取締役 白坂 和彦

2024年12月17日付け質問状に対する同月25日付のメール回答ありがとうございました。

関係者と相談の上、下記の通り再質問がありますので、ご回答頂きたく、よろしくご指導の程、お願い申し上げます。

再質問

【質問1】について
規制値の非公式の提示が、改正法の一部の施行の3か月前であった理由をご教示ください。

(回答)
大麻取締法の一部改正法の施行に先駆けて、周知期間が必要であったためです。なお、残留限度値については、本年9月11日に政令において公布されたことを申し添えます。

また、残留限度値の設定にあたり、その原案については、本年5月30日からパブリックコメントにより意見募集を行っています。

質問1に対する追加質問
【再質問1-1】
販売用CBD関連製品を大量に在庫している事業者だけでなく、キャンペーンなどで安価に大量購入した患者などは、とても3ヶ月では処分・消費できません。食品や医薬品の規制変更では 通常6ヶ月から1年以上の猶予があるのが一般的ですが、CBD関連製品については、なぜ3ヶ月で足りるとしたのか具体的な根拠をご教示下さい。

【再質問1-2】
新基準に適合しないCBD関連製品を現在も使用している消費者は麻向法による処罰の対象となるのでしょうか。

【再質問1-3】
事業者や使用者(消費者)に対しては、どのように周知したのでしょうか。
とりわけ、これまで厚労省監視指導・麻薬対策課にメールでの確認申請を行ってきた事業者や消費者に対して、書面またはメールによる通知によって周知されたでしょうか。今回の規制で損害を被る虞(おそれ)のある事業者や消費者などのステークホルダーに対しては、相応の配慮をする必要があると思われますが、具体的な対応をご教示ください。

【再質問1-4】
厚労省監視指導・麻薬対策課が、12月12日施行前に、THC残留限度値について、事業者等に対して、周知した時期及び方法について、その詳細を具体的にご教示ください。

【質問2】について
新基準に適合しているか不明な既存品のうち、分析未了の製品の在庫は、どのように処理すればよいか、ご教示ください。(公的機関に提出すべきか。廃棄するとすれば、その合法的処理方法について)

(回答)
お手持ちの大麻草由来の成分を含有する製品について、Δ9-THCの残留限度値を超える製品である可能性がある場合は、ご自身での廃棄は行わず、最寄りの麻薬取締部までご相談ください。

質問2に対する追加質問

【質問2-1】
合法的な商品を合法的に購入したにもかかわらず、猶予期間なしに、何らの配慮なしに容赦なく取締り、処罰するというのが麻薬及び向精神薬取締法の建て付けになっています。

合法的に入手したCBD製品を治療等に使用している消費者(患者等)には、突然の法の変更であり、治療方針の変更は容易ではありません。

また、合法にCBD製品を入手した事業者にとっても、Δ9-THCの残留限度値を超えるかもしれない、という程度の認識で捜査対象となることに恐怖を感じている者もいます。

いわゆる「直罰方式」と採られるのか、厚生労働省としての規制方針をご教示ください。

【再質問2-2】
個人のCBD関連製品使用者が麻薬取締部に相談した場合、具体的には、どのような対応がなされるのでしょうか。

想定される事例に応じて、具体的にご教示ください。

【質問3】について
既存品の検査結果が法改正後の規制に不適合と判断した場合、海外メーカーに返送することの可否をご教示ください。

(回答)
「法改正後の規制に不適合」が、THCの残留限度値を超過しており、麻薬に該当する場合を指すとしますと、海外への輸出には、麻薬輸出業者の免許が必要になります。

このため、一般には海外メーカーへの返送はできませんので、上記【質問2】と同様に、ご自身での廃棄は行わず、最寄りの麻薬取締部までご相談ください。

質問3対する追加質問

【再質問3-1】
CBD関連製品の使用者(施用者)が、Δ9-THCの残留限度値を超える製品である可能性がある物質について、麻薬取締部や警察に相談した場合に、検査の結果、基準超えだった場合、捜査対象になることはあり得るでしょうか。

厚生労働省及び警察庁の捜査方針について、ご教示ください。

【再質問3-2】
CBD関連製品の事業者が、Δ9-THCの残留限度値を超える製品である可能性がある物質について、麻薬取締部や警察に相談した場合に、検査の結果、基準超えだった場合、捜査対象になることはあり得るでしょうか。

厚生労働省及び警察庁の捜査方針について、ご教示ください。

質問4対する追加質問

【質問4】
クリーム状のバームにおけるTHC残留限度値が1 ppmとされていますが、どのような保健衛生上の危害(健康被害等)が生じ得ると想定しているのかについての科学的根拠をご教示ください。

(回答)
Δ9-THC 残留限度値については、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会のとりまとめにおいて、「欧州における規制を参考に、保健衛生上の観点から、THC が精神作用等を発現する量よりも一層の安全性を見込んだ上で、尿検査による大麻使用の立証に混乱を生じさせないことを勘案し、適切に設定すべき」とされております。 これを踏まえ、一般事業者が輸入できる食品等の基準として、かつ、THC の作用が発現するものが流通しないようにするために、欧州食品安全機関が2015年にガイドラインで示した急性参照用量を参考とし、これに区分ごとに想定される物の摂取量等を考慮した上で、残留限度値を設定しております。

なお、欧州食品安全機関は、ヒトのデータに基づく毒性評価(中枢神経系への影響と心拍数の増加)を考慮して、 1日2.5mgのΔ9-THCの投与量を毒性効果が観察された最小投与量として設定しています。

質問4に対する追加質問

【再質問4-1】
油脂(常温で液体であるものに限る。)及び粉末百万分中十分の量 (10ppm、10mg/kg、0.001%)を算出した計算式について

油脂 (1μgΔ9-THC/kg体重)×50(kg体重)÷摂取量8.8(g)

 この計算式で用いられている摂取量8.8gという数値は、令和元年国民・健康栄養調査で得られた一日あたりの油脂の摂取量の中央値ですが、CBDオイルを摂取する人が一日あたりに摂取するオイルの量は、食用油脂の摂取量と比べて非常に少ないです。

この件について、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、「ダイエタリーサプリメントの場合は、法的要件である1日あたりの推奨摂取量を用いることができる」とし、実際に、その後2024年に公表された「CBDオイル中のカンナビノイドの含有量に関する考察」では、メーカーが推奨する1日の最高用量(20滴)を推定摂取量として採用し、「オイルのΔ9-THC濃度が少なくとも100mg/kgの場合、ARfDを超える。 」と報告しています。

CBDオイル等を想定したΔ9-THC残留限度値の計算式に、一般の食用油脂の摂取量を代入したことの妥当性を証明する科学的根拠をお知らせください。

【再質問4-2】
欧州食品安全機関による急性参照用量(1μgΔ9-THC/kg体重)は最終製品として市場に流通する食品に関する指標ですが、日本のΔ9-THC残留限度値は、原料であるか最終製品であるかを問わない「製品中の濃度」であり、これを超えたものを麻薬に指定する基準値です。両者がどのように関連するのかについて、科学的根拠をご教示ください。

【再質問4-3】
「尿検査による混乱を避けるため」という理由は、取締りの便宜を説明しているものと思われます。また、尿検査等による物質同定は、Δ9-THCとその代謝物が混合している可能性もあります。

尿検査の方法とその正確性について科学的根拠をご教示ください。

【再質問4-4】
本件に関するパブコメにおいて、海外の著名な研究者・専門家から、今回の厚労省が定めた基準値に批判的見解が寄せられていました。これらのパブコメをどのように検討したのか、具体的な討議の過程とその結果について、議事録等の開示を求めます。

【再質問4-5】
 クリーム状のバームからTHCを抽出することに「保健衛生上の危害」が生じるリスク(危険性)があるとする科学的根拠および政策としての合理性をご教示ください。

以下、追加の質問となります。

【追加質問5】
CBD関連製品を輸入するに際し、THC残留限度値について成分分析表を厚労省に提出して確認をとることは、法的要件ではないとされています。

「この事前確認手続きは、当該製品の輸入に際して必ず必要な法定事項ではありません。」

(参照)厚生労働省の輸入の「手続き方法」のサイト(2025年2月12日最終閲覧)

クリックしてcbdtebiki_20241212.pdfにアクセス

一方、上記「手続き方法」の説明によれば、厚労省の確認は「法的要件」ではないも関わらず、「同じ製品、同じロット(バッチ)番号であっても輸入の日が異なれば、それぞれ別の輸入になりますので、輸入の都度、新規の確認依頼が必要となります。」とあります。

現地発送が同一業者による同一製品であっても、新たに「確認依頼」を申請する必要があるのでしょうか。運用の方針をご教示ください。

【追加質問6】
輸入するCBD関連製品が飲食物の場合、販売用食品として輸入する際、検疫所に提出する「食品等輸入届出書」には、麻薬対策課が確認した日付と担当者名を記載することが求められます。

輸入するCBD関連製品が販売用飲食品の場合も、麻薬対策課への確認は「法的要件」でないにもかかわらず、要件外の事項を検疫所(厚労省の機関)が、実質的には義務付けていることになります。その法的根拠をご教示ください。

【追加質問7】
 厚労省は、CBD製品の輸入許可基準を明らかにするよう求めた2017年4月17日付の私の情報開示請求に対し、それを明らかにすると「違法若しくは不当な行為を容易にするおそれがある」として不開示としました。

 昨年12月12日に施行されたTHC残留限度値が、「違法若しくは不当な行為を容易にするおそれが」ないと判断した科学的根拠を教えて下さい。

【追加質問8】
 食用大麻種子(ヘンプシード)は、Δ9-THC残留限度値のその他の区分1mg/kgが適用される対象となるのかご教示下さい。

以上、ご回答をお願い申し上げます。

連絡先
株式会社あさやけ
代表:白坂 和彦
電話:0266-75-2858